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 小慣れた英語を使うには、英語らしい表現を身につける必要があります。その近道となるのが「意外な意味の英単語」を知ることです。

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表現の射程を考える

 表現には「幅」のようなものがあります。この単語ならこのあたりまで使える、という感覚があって、それを仮に「表現の射程」と呼びましょう。

 たとえば山登りですが、「登る」が真ん中だとして、ほかにどんな表現ができるでしょうか。いわゆる類語的な発想です。

 「山にあがる」「山を行く」「山頂を踏破する」「登攀(とうはん)する」「山を攻略する」「山を征服する」「山を制覇する」などなどいろいろあると思います。

 英語だったら、まず”climb“があり、”ascend“や”make an ascent of“があって、”go up“や”get up“、”go on“や”get on“、そのまま”mount“と言ったり、”rise“もあるでしょうか。そこからはみ出して、”scale“とか、”travel up“とか、”attack“と言ってもまだ意味は通ります。

 これが射程(類語として通る幅)です。この感覚が養われると、言語感覚というのがわかってきます。ほかにも「交通の便が良い」とするのが日本語ですが、英語では”easy access to“です。ちょっとちがうんですね。もちろん”easy“の代わりに”good“を使っても問題ないのですが、射程としては真ん中から遠い。

 こういうのをちまちま見ていくと、より慣れた翻訳ができるようになります。

“fish for”(探り出す)

 「魚」か「釣り」のイメージが強い”fish“ですが、捨象して使うこともあります。例文ですが、マイケルマンの『ブラックハット』から。

Chen Lien: I’m sorry for what happened to you.
Nicholas Hathaway: Well, don’t be. I’m not fishing for sympathy, here. I did the crime, I’m doing the time. Time isn’t doing me.
Chen Lien: What’s that mean?
Nicholas Hathaway: I do my own time, not the institution’s. See, to hold on to who you are in there, you dedicate yourself to your program. You work out on your body and your mind.

 ”fish for sympathy“(同情に向けて釣り糸を垂らす)という表現です。おそらく日本語ではまだ射程範囲ではないので、「同情を釣る」という表現は微妙にわかりにくいでしょう。「同情を誘う」とか、せめて「煽る」ぐらいですかね。

 ”fish“は、ほかにも”fished the secret out“(秘密を探し出した)とか、”Why all these questions? What are you fishing for?“(どうしてこんなことをいろいろ質問するのです、なにを探り出そうとしているのです)とか、”He’s fishing a loan.“(金を借りようとしている)とかにも使えます。[英話大活用辞典]

 最後に余談ですが、”fish (eater)“はキリスト教徒のことも言います。これについては別の機会に。

 

画像:Matthew Hamilton