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 アメリカなどの海外にワーホリ、留学、旅行(一人旅)などに行くひとだけではなく、仕事上で外国人と英語で話せなくて悔しい思いをしたことがあるひともいるかと思います。ほかにも外国人の友だちが欲しいとか、観光で案内してあげたいとか、交流したいとか、サポートしたいとか、目的はいろいろあるでしょう。

 それらの目的のすべてを支えている「英会話の基礎」についてお話しいたします。つまり、英会話初心者から独学で上達するポイントやコツについて書いてゆくつもりです。

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「英語ペラペラ」というイメージを捨てる

 結論から申し上げると、大事なのは「英会話」というものをゼロから理解することです。フレーズだけ覚えても、発音だけ綺麗にしても、文法を身につけても、やはり物足りません。

 英会話のプロでもある通訳者のなかにも「信用できない通訳者」というのがたくさんいます。リスニングのスキル、スピーキングのスキルがプロレベルだからといって「英会話」できるかどうかは、またべつの話なのです。

 大学在学中、”ESS(English Speaking Society)”という部活に一瞬だけいました。あそこで行われていたのは、英会話ではなく一種の「ダイアログ(対話劇)」だったと言えます。つまり、ほとんどの村人は「覚えてきたフレーズ」を不完全に使って、「英語ペラペラ」なじぶんをつくることに邁進していました。

 この「英語ペラペラ(イメージ映像)」は、だれもが最初に陥るトラップだと言えます。もちろんイメージ映像の再現で満足できるかたは、それを目指すのがよいです。ただ、「英語ペラペラ」というイメージではなく、実際に英会話で困っていたり、英会話の上達を目指しているのであれば、あのイメージは、一度だけ忘れてください。

 冒頭で紹介した「信用できない通訳者」というのは、このイメージを極めたひとたちです。傍目では「英語ができるひと」ですが、会話内容を咀嚼してみると「裸の王様」です。つまり、英語はペラペラだけど、会話にはなっていません。「フレーズの王者」でしかないひとが、通訳で飯を食っていることがよくあります。

「裸の王様=フレーズの王者」にならないよう

 日本語で考えてみればわかることですが、たとえば「これなに?」と聞かれたとします。この場合、どのような答えが考えられるでしょうか。

①名前がわからない→名前を教える
②機能がわからない→機能を教える
③所有者がわからない→所有者を教える
④存在意図がわからない→存在意図を教える
⑤実は欲しがっている→要るかどうか聞き返すorあげないと断る
⑥持ち込み禁止をとがめている→謝るor説明する
⑦会話がしたいだけ→会話を演出する

 ひとまず7つ挙げてみましたが、おそらく出そうと思えばいくらでも出せることですね。相手の望んでいることによって、答えるべき内容というのは大きく異なります

 フレーズという弾丸を詰め込んでも、マシンガントークになるだけです。「なぜそれがそこにあるのか」を聞いているひとに、「それにどんな機能があるか」をペラペラ答えても、答えたことにはなりません。

「なんか英語でしゃべってよ」と「不自然な英会話」

 英語ができるということがバレると「じゃあふたりで英語でなんかしゃべってみてよ」というふうに言ってもらえます。関心をいだいてもらえるのはありがたいのですが、ここには非常に困難なことが……。

 すでにお気づきかもしれませんが、英語が「見せ物」になる瞬間なのです。ペラペラというイメージ映像を再現してくれ、という意味になります。見せたり見られたりする英語は、とてもぎこちないものです。

 できるだけペラペラな英語を選び、できるだけ英会話してそうなトピックを選んでしまいます。ほんとうは、そんな「台本的な英会話」なんて必要ないと思っていながら、架空の台本を想定してしまうのです。

 相手に”Something fun that happened recently?“(最近なんかいいことあった?)と聞かれて、”Nope. You?“(特には。お前は?)と答えて、”None far so.“(特にない)となって話が終わってしまうことだってよくあります。ここでドラマだったら「俺たちってさあ、なにもないよなあ We are always NOTHING, aren’t we?」「たしかにな、でもそれも悪くない You’re right, but that’s evaluatable.」となるかもしれません。でも会話は、そうじゃあないのです。どちらも乗れない話題は、そこですぐになかったことになります

 「なんか英語しゃべって」は、ペラペラな英会話を見せるために、自己校閲をたくさんいれます。このトピックでいいか、この返しで盛り上がるか、このフレーズは覚えやすいかとか、そういう校閲をしているうちに借り物の不自然な会話になってゆくのです。

フレーズは最後でいい、まずは相手の望みに耳を傾ける意識を!

 よくある英会話ミスのひとつに「Can I help you?」があります。その質問が適切になるタイミングというのは、実はそこまで多くありません。

 相手が望んでいることは、あなたの”help“なんかではないということです。日本人がこのフレーズで話しかけてしまうとき、だいたい相手が望んでいるものは「じぶんの状況をカテゴライズして、認識して、適切な行動をとりたい」ということです。助けがほしいなんて思っていないのです。

 つまり、相手が迷子になっているのであれば、”Are you lost?“(道に迷いましたか)と聞くことになりますし、”You wanna go somewhere?“(どこかに行きたいのですか)、”Where do you want to go?“(どこへ行きたいですか)のような、「あなたがなにをしたいかわかってますよ」という間接的な聞きかたをしたいです。

 逆に”Can I help you?“というフレーズが利いてくるのは、相手が”I need help.“(助けが必要だ)と自覚しているときです。

 ただ、人間、なかなかそこまで輪郭のはっきりした自己認識を持つことはありません。焦っているときはじぶんに”help“が必要かどうかなんて考えていません。突然、”Can I help you?“と聞かれても、”I’m not really in any trouble.”(そこまで困ってないよ)と思ってしまうのです。

 

 フレーズ暗唱よりも、相手の心の声に耳を傾けるほうが重要だということを主張しました。なんとなくダイアログ(対話劇)では足りないことが、わかっていただけたかと存じます。

 これからはフレーズ暗唱型の発想を捨てて、英会話というものがなんであるかと意識してみるところから「英会話」の上達につなげてゆきます。


画像:Mihai Surdu