Pocket

 「ジューンブライド」(June Bride)は、英米文化において、六月の花嫁はしあわせになれるという言い伝えのことです。

 ユノー(Juno)というローマ神話の結婚の神がユリウス暦(Julian calendar)の六番目を担当していることからきているのですが、いまでは、バカンスで日程調整――例えば、挙式・披露宴・新婚旅行・子作りの日取りと段取り――がしやすく、基本的に雨が降らないというところに人気があるようです。(ちなみに五月は死者を祀る月なので結婚はほとんどしません)

 フランスでも、空が美しい季節という理由だったり、バカンスによるスケジュールの合わせやすさから、六月に結婚するひとは多いです。さすがに「ジューンブライドが~/結婚の神が~」という話はでません。

 余談ですが、むしろフランスの婚姻制度はドライで、「コントラ・ドゥ・マリアージュContrat de marriage」という離婚時の権利分配についての取り決めを(任意で)やるひとたちが多いです。ノーテル(notaire)と呼ばれる公証人のところで四万円ぐらいで作れる公的な拘束力のあるものです。

 そもそもカトリック(フランス人の七割)における結婚観では、「好きだから結婚する」ことができません。人生の問題、困難、責任を夫婦で協力して乗り越える覚悟が求められるため、離婚自体が簡単には認められていません。

 フランスでは結婚も離婚も面倒なので、民事連帯契約(ル・パクトゥ・スィヴィル・ドゥ・ソリダリテ le Pacte Civil de Solidarité)という簡単なパートナー制度もできました。結婚と同居のあいだに位置する契約で、結婚したのと同じ権利を与えられます。

 さらにフランスでは、(六月に結婚するなら)五月の土曜日に友人を集めて結婚前に大パーティをするのですが、それを「EVJF/G=enterrement de vie de jeune fille ou garçon」と表現するところがフランス的ですね。

 アンテルモン(enterrment)というのは「埋葬」という意味で、直訳ですと「少女/少年時代の埋葬」ということです。これから結婚しちゃうから最後に遊んじゃえ、というなんともハレな感じです。

 ちなみに、フランス語のボキャブラリーとして、結婚指輪「アリアンス alliance」、ウェディングドレス「ローブドゥマリエ robe de mariée」、新郎のブートニアは「ブトニエ boutonnière」です。

 離婚を想定した契約書や、民事婚(マリアージュ・シヴィル Mariage civil)の書類を出しに行くときの市役所での診断書読み上げとか(隠している持病などがないように!)、フランスはかなりドライですが、やはりどこか迷信を持っております。

 例えば、婚約前に花嫁のドレス姿を見るのは縁起が悪い(Ca me porte la guigne)とか。ふだんロジカルにやっている男性でも、平気でそういうことを言い始めます。面白いですよね。

 日本でもジューンブライドは人気だ、と思っているひとがたまにおりますが、実は不人気なんです。

 猛暑の八月、忙しい一月、秋雨の九月に次いで挙式件数が少ない六月。最近のトレンドである「ガーデン系」の式場は雨に弱いし、大きな窓があって開放感のある式場も増え、雨の日は薄暗くなってしまいやすくなりました(ナイトウェディングにすると雰囲気が出るそうです)。

 『ゼクシィ』を見てもジューンブライドなんてことばが出てこないほど、業界内では「不人気」だということがわかります。

 日本でのジューンブライドのイメージは、嘘かもしれませんね。

——————————————-
初出:「四月は君の嘘、六月は”bride”の嘘」(2017.06.05)
画像:Michelle Jimenez